文京区の気になる場所

2017年は文京区の気になる場所(ところ)をご紹介いたします

12月は関口「カテドラル関口教会聖マリア大聖堂」

slide01.jpg 2017年も12月を迎え、文京区の気になるところを取り上げたテーマも最終回。今回は東京カテドラル(関口教会)が気になり、行ってまいりました。建物観賞で何度か訪れるも、この教会の成り立ちを意識したことはありませんでした。が、前回のニュースでお知らせした『みたみよ!!』という冊子に載っていた東京カテドラル紹介記事の一文、「1964年、ケルンからの寄付で、丹下健三さんが設計した教会〜(以下略)」に引っかかりました。そもそも1899年にフランス語学校の附属聖堂としてスタート、木造の聖堂が建てられ、東京大空襲によって焼失しますが、記事の通りドイツのケルンによる支援が決定、1964年に再建されたのが20世紀教会建築の最高峰とも評される現聖堂です。

気になるのは、なぜ同じ敗戦国であり、ケルン自体も損壊した大聖堂の修復が必要であったのに、他国の教会再建の支援をするのか、です。

ケルンの信徒達の中でも「なぜ援助するのか」という声がうずまいていたそうですが、当時信徒をたばねていた枢機卿は「あるからとか、余力があるから差し上げるのでは、福音の精神ではありません。」と語ったとのこと。この言葉でケルンの信徒達も変えられていき、自分たちの教会と他国の教会をも立て直すに至ったそうです。

福音の精神自体がわからない身ではありますが、自分優先ではなく他者を想い、行動することに通じるものかなと大まかに解釈しています。とくに余裕のないこの時期、自分には難しいことではありますが、せめて頭の片隅などの身近なところに置いておきたいと思います。

11月は音羽「鳩山会館」

kininarubasyo.jpg 「今年は秋が短い」とよく耳にしたりつぶやいたりしてしまう今年の秋。

秋といえば過ごしやすく観光にもぴったり、収穫の季節でもありますが、なかなか堪能できる天候に恵まれずじまい。あっという間に木枯らし1号も吹いてしまう始末です。

が、都心で味わえる秋はまだまだこれから。弊社から徒歩圏内、大通り沿いに佇む鳩山会館は政治家を輩出した歴史的背景とその建築が有名ですが、庭園もおすすめです。訪れてみると、秋のバラはこれから見頃を迎えるようでした。長雨のおかげで例年よりも遅れているそうです。敷地内には大きなモミジも見かけますので、おそらく今月は紅葉と見頃のバラを両方楽しむことができるのでは。とくに秋のバラは香りがよいとのこと。

もうすぐ慌ただしい時間に染まってしまう年末がやってきますが、2017年の紅葉は、職場近くの鳩山会館で、眺めるだけでなく花の香りも楽しんでみたいと思います。

 

 

 

10月は茗荷谷「カイザースラウテルン広場」

 

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 涼やかな秋の空気とともに、唐突なニュースが続く昨今。消化しきれないまま傍観しそうになりますが、そうもしていられず、という状況。時代の流れに乗ることは難しいと感じてしまいます。

そんな時ににおすすめなのが「カイザースラウテルン広場」。こちらは茗荷谷駅からすぐ、窪町東公園の一角にあります。文京区とドイツの一都市、カイザースラウテルン市との姉妹都市提携のシンボルとして設置された彫刻群が目を引きます。この彫刻群、触れることはもちろん、乗れます。しかも伝説上のユニコーンや人面魚の背に、です。ユニコーンは偉大な力を象徴、魚は幸運のシンボルとのこと。ほかにもアンモナイトやカタツムリといった個性的な彫刻があり、乗ったり座ったりよじ登ったりできますが、ユニコーンの頭には乗れません。危険です。季節も変わり、時代と時間に乗り切れないと感じたら、訪れてみてください。ちょっとした異空間となっており、その先には細長い窪町東公園が続いているので、気分転換にはぴったりです。

 

 

 

 

 

 

 

9月は小石川植物園の大震火災記念石


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 日本で最も古い植物園であり、東京大学の教育実習施設でもある小石川植物園には、植物だけでなく、歴史を物語る遺構や念碑が遺されています。その一つが「大震火災記念石」です。

 大正12年(1923年)9月1日に発生した関東大震災は、東日本大震災以前の日本にとって、史上最大級の被害をもたらした災害として記憶・記録されています。とくに火災による被害が甚大であり、当時、焼け出された市民3万人以上が一時的に植物園に避難し、一部の人々は園内の震災救護所で長期にわたる避難生活を送り、大正141月に最後の居住者が退去したそうです。この記念碑は有志によって建てられ、今に至ります。9月1日は防災の日となり、関東大震災というと、教科書上の漠然としたイメージしか持ち合わせていないのが現状ではないでしょうか。都民のオアシスともいえるこの植物園のなかで、遠い記憶となりつつある大震災で起きていた事を、この記念石は改めて気づかせてくれています。

 

 

 

 

 

 

 

8月は「礫川公園・東京都戦没者霊苑」

8bunsei.png 丸ノ内線「後楽園」駅を出るとすぐ、広場のようなスペースがあります。毎回足早に通り過ぎてしまいがちですが、階段状の植え込みや、ヨーロッパの庭園を思わせるような彫刻など、なかなか凝ったつくりの公園です。その名は礫川公園(れきせんこうえん)。そもそも礫とは小石の意味。礫川=小石川となります。このあたり一帯はもともと小石川町であったことがわかります。公園を通り抜け、春日通り沿いに歩いてみると、左手に東京都戦没者霊苑の入口がひっそりとあります。ひっそり過ぎるくらいで、何度もこの前を通っていながら気づいたのはごく最近。太平洋戦争で亡くなられた戦没者の霊を祀っている施設です。展示室もあり、手紙、衣類・兜・などの遺品を間近にすることができます。外観と同じく内部もひっそりとしているのですが、実物の遺品を前にすると72年も昔のことが、まだ過去のものではないと思わされます。

気づかず、通りすぎてしまいそうなこの施設のように、72年前に終わった戦争は徐々に存在感を失いつつありますが、確かに存在しています。

そして、間近に向き合うことで、生き続けていくように思わされます。

 

 

 

 

7月は「伝通院」「源覚寺」


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梅雨なのか、そうではないのかハッキリしない毎日ですが、モヤモヤしていても確実に時間は流れ、気づけば今年も折り返し地点となりました。毎年のように焦る自分に飽き飽きするも、付き合わざるを得ないのが現実。ここは騙しだましでも気分転換に頼りたいところです。とは言え時間も資金も限られる身の上。そこで近場の気になるところの出番です。今月22日と23日は文京区内の名刹「伝通院」と「源覚寺」で朝顔市とほおずき市が開催されます。それぞれのお寺に近くまで出向くことが多い割りには横目で通り過ぎるばかり。今年こそ体験すべきかなとホームページをチェックしてみますと、何やらイベントが盛り沢山。伝統的な朝顔市・ほおずき市をはじめとする風流なイメージのイベントはもちろん、国際色豊かなラインナップ。タヒチアンダンスのパフォーマンスやリオ五輪で銀メダルを獲得した種目「ボッチャ」の体験もあり。伝統的な朝顔市で涼を感じるもよし、目新しいスポーツで汗を流すのもよし、歴史的なお寺で現在の季節を楽しんでみたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

6月は肥後細川庭園


 6月といえばそろそろ入梅の頃。が、すでに日中は夏本番並みの毎日。おのずと涼を求めたくなりbunsei160-pho.jpgます。

「新江戸川公園」から名前を衣替えした「肥後細川庭園」は大きな池と周りを囲む豊かな緑や季節の花が楽しめます。今年の3月に名称を変えたばかりでまだ馴染めませんが、もともとは細川家が有する大名屋敷の庭園跡地でしたので、その由来がわかりやすくなったといえます。庭園の様式は「池泉回遊式庭園」とのことで、大きな池を中心に、周囲を歩きながら風景の移り変わりを観賞出来るように設計されているそうです。これからは菖蒲が見頃。菖蒲で有名な公園のように群生はしていませんが、水際に凜と立つ姿が涼やかな印象を与えています。

 そしてもうひとつ、この時季ならではの風物詩があります。肥後細川庭園のお隣、椿山荘の庭園にて開催中の「ほたるの夕べ」です。ホテルの庭園というと、敷居が高いイメージですが、ご安心を。庭園のみの利用ならば無料とのこと。ほたるの動きが静かになる満月の前後は避けた方がよいそうで、風が無く、蒸した夜がオススメとか。期間は72日(日)まで。ご近所で、非日常を味わいたい6月です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5月は根津神社

 tutuji.png新年度から約1カ月、あらたな環境でスタートされた方も、これまで通りの方も、なんとなく一息つきたくなる5月がやってまいりました。

一年を通して最も過ごしやすい季節でもあり、休暇を楽しまれる方も多いことでしょう。新緑が茂り爽やかな日差しとはうらはらに、ストレスや疲労感に浸かった身体をどうにかしたい。そんな方には根津神社がおすすめです。

 約1900年前に創建、震災や戦災を乗り越え江戸時代の建築が現存する根津神社は、自然にも恵まれていることから強運と癒やしの力に満ちたパワースポットとして知られています。実際、社殿や鳥居の朱の色が鮮やかな新緑に映え、その場を歩くだけでも非日常な空気を味わえます。

 そして5月5日までとなりますが、例年通り「つつじまつり」も開催中です。

「つつじ」というと、道路際や公園などで必ず見かけるほど馴染み深い反面、ありがたみを感じづらい花の一つ。が、あなどってはいけません。根津神社のつつじは約100種の3000株。見慣れたはずのつつじも一堂に会すると、ちょっと違った存在に見えてきます。

 さらには昨年に引き続き、「つつじまつり」で配布される『浪漫ちっくマップ』の印刷を弊社が担当しておりますので、ぜひご活用ください。

 根津神社とその界隈はまち歩きの有名スポット。名所旧跡だけでなく、個性的なお店もひしめいています。この5月、パワースポットとまち歩きで、心身リフレッシュをお試しください。

4月は播磨坂

4harimazaka.jpg 「文京区でお花見」、といえば真っ先に思い浮かぶのが「播磨坂」。道幅約40メートルのゆるやかな坂道に三列の桜が500mほど連なる様子は圧巻です。どことなく歴史の重みを感じさせるような名前ですが、戦後の復興事業として新しく造られた道だとか。桜が植えられたのは更に時代が下り、東京オリンピックを4年後に控えた1960年のことです。地元の方々によって植えられた桜は現在約120本、枝を大きく伸ばし、区外からも人々を惹きつける桜の名所となりました。実は、播磨坂は桜だけではありません。桜を見上げることに疲れたら、ちょっと目線をさげると四季折々の花が咲く花壇を見つけることができますし、沿道に目を向けると、雰囲気あるたたずまいのお店も目に入ります。実際に足を運んでみると、桜だけではない播磨坂を楽しむことができます。

 主役である桜以外にも見所のある播磨坂。震災からの復興途中であり、2度目の東京オリンピックを控えたいま、播磨坂を花開かせた地元の方々のように、何か新しく地域に根をはり、育て続けることができるのだろうかと文京区音羽の地で思い巡らす春です。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

3月は坂下平和地蔵尊

157pho.jpg 谷中銀座商店街からよみせ通りを横切り、不忍通りへ向かうと、小さなお堂があります。坂下平和地蔵尊です。場所は文京区千駄木3丁目交差点付近、千駄木駅からすぐの往来の多い立地ですが、そのお堂はひっそりと佇んでおりました。よくみると、由来が書かれた説明書きがあり、生花が手向けられた地蔵尊の奥には名前が記されています。

 今から72年前、東京大空襲の数日前となる34日朝のことです。米軍の空襲により千駄木・谷中に多くの爆弾が投下され、当時の坂下町(現千駄木三丁目)にあった銭湯「鹿島湯」の防空壕に避難していた23名の方が犠牲となりました。犠牲者のなかには乳児や幼い子供たちもいたそうです。

おそらく、日本一有名で元気な商店街の方々の、現在ではあまり語られることの少ない歴史を垣間見た気がしました。前述の通り、小さな地蔵尊にはいきいきとしたお花が飾られ、植木鉢も複数並べられておりました。いまも大切に生かされているお堂であることが伝わります。

 310日の東京大空襲、そして3月11日の東日本大震災でさえ、「風化」に直面している現実に愕然とすることが少なくありません。

このお堂を大切にされている方々のように、戦争や震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈りし、戦争による犠牲など二度と起こさないことを考えてみなければと思わされました。国内外で今も苦しんでいる方々を心に留めつづけ、少しでも元気にできるように何か行動できればと思う今年の3月です。

2月は「切支丹屋敷跡」

2tuki.png 現在公開中のマーティン・スコセッシ監督作「沈黙-サイレンス-」。米国を代表する映画監督の一人である彼が、遠藤周作の同名小説を二十数年にわたり映画化を熱望、ようやく公開にたどり着いた作品です。原作の「沈黙」は江戸初期のキリスト教禁教下を舞台にしており、実在のポルトガル人宣教師フェレイラとイタリア人宣教師キアラをモデルに描かれた国内外でも評価の高い小説です。

 ご存じでしょうか、ラスト近くに描写されている「切支丹屋敷」は文京区小日向1丁目にあります。キリスト教徒(切支丹)を収容する施設が1792年に廃止されるまで存在していたそうです。

 主人公(ポルトガル人宣教師)ロドリゴのモデルとなったイタリア人(スコセッシの家系と同じシチリア出身)キアラは、布教のため日本に潜伏するも、拷問を経てキリスト教を棄て「転んで」しまいます。1646年から1685年に亡くなるまで、この切支丹屋敷に軟禁状態で収容され、棄教に荷担する側として人生を終えます。

 キアラの死後1708年、再びイタリア人宣教師(やはりシチリア出身)が収容されます。禁教下、最後の宣教師として屋久島に上陸するも捕えられたシドッチです。彼は1714年、47才でこの切支丹屋敷で没したと伝えられています。彼の死から300年後の2014年、切支丹屋敷跡で3体の遺骨が発掘され、20164月、調査結果が報道されました。3体のうち1体は、DNA鑑定や文献資料から、シドッチの遺骨である可能性が高いとのことです。

 今は「切支丹屋敷跡」の碑と、遺跡発掘調査の掲示板が設置されているのみですが、坂の入り組んだ土地柄でしょうか、何か不思議な空気感を持っているような、ただならぬ雰囲気が感じられる場所です。

 はるばる大洋を渡り、植民地政策の一端など様々な見方もあるかと思いますが、志高く異文化に飛び込んできた人々が数百年も前に実在していた。「沈黙」の彼らは存在していたのだと。その証しが身近にあるのは有難いことだなと思います。

 

 

1月は護国寺

155pho.jpg 初回は弊社のご近所、護国寺です。建設は1681年、文京区大塚に位置し、会社からは徒歩2、3分の近さです。最寄駅名も「護国寺」であり、目や耳にしない日はありません。が、実際足を踏み入れることはまれであり、改めて歩いてみると「富士山」に遭遇。護国寺境内で、なかなか勾配のしっかりした「富士山」を歩くことができます。

 護国寺は江戸時代から現代にかけての逸話も多く、五代将軍綱吉の生母「お玉(桂昌院)」が建立したことから、玉の輿のお寺としても知られています。本堂への階段を上れば、穏やかな表情の
大仏やまるまるした猫たちにも出会えます。

 ぜひ一度、駅近で玉の輿のお寺をゆっくり歩いてみませんか。

「富士山」からの眺めもなかなかです。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

月の異名について

2016年は月の異名についてお話します

12月は果ての月

201612_画像.jpg 1月から紹介しました中で、もっとも馴染み深い月の異名は「師走」ではないでしょうか。12月前後になると、なにかと聞こえてくるこの「師走」。一年の最後、慌ただしくなる雰囲気にぴったりです。他には「果ての月」「極月(ごくげつ)」など、最後のイメージを思わせる異名もあり、字面からも焦りを感じてしまいます。そうです、今年も一年最後の月を迎えてしまいました。

そもそも今年のテーマ「月の異名について」は、加速していく時間自体を見直そうと思い、取り上げてみました。結果的には、当然加速を抑えることはできずにおりますが、一般によく知られた名前のほかに、異なる呼び名が古来より存在し続けていることは理解できました。加速する時間にさらされながら、残り続けるものがあるようです。2016年は国内外で、これまでとは違ってきたな、と感じる出来事が相次いだように思えます。変化に対応する柔軟さと遺したいものを守る方法などを考えていきたいと思う今年の暮れです。

11月は竜潜月(りゅうせんづき)

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 今年もあと2ヶ月弱となり、プロ野球はパ・リーグの覇者日本ハムファイターズの10年ぶり3度目の優勝で幕を閉じました。が、25年ぶりのリーグ優勝を果たした広島の活躍は目を見張るものがありました。今年のセ・リーグは横浜も3位という好成績、時代は変わったのだなと思わずにいられません。

さて、月の異名です。「霜月」で広く知られる11月ですが、「竜潜月(りゅうせんづき)」という異名が存在します。前述の流れから、今年のセ・リーグ順位表が浮かびます。かつて常勝軍団と呼ばれた中日ドラゴンズは19年ぶりの最下位。他球団ファンの筆者からしても寂しさを覚えます。「竜潜」自体の意味は、「竜=英雄・賢人」が水中にひそんでいる意味から、英雄・賢人が世に出ないで隠れていること。また、天子がいまだ位に就かないでいること、を意味しています。中日ドラゴンズにとっては、ここ数年が「竜潜月」なのかもしれませんが、最下位まで潜ったらあとは浮上するのみです。中日と自分の姿を重ねつつ、厳しい季節を肥やしにして、今年の広島のような勇姿に近づければと思います。

10月は醸成月(かみなしづき/かみなんづき)

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最近「神」が増えたのでしょうか。いわゆる若者ことば上で頻繁に登場する神様ですが、今月は「神無月」。神様は出雲大社に集合する、という有名ないわれのある月です。ほかにも「神有月」「神去月」など、やはり「神」の表記がつらなる異名が多く、収穫の月でもあることから収穫を感謝する「神の月」が語源であるという説もあります。

そんな中、気になる異名は「醸成月(かみなしづき)」。美酒美食に憧れを持つ身としては惹かれる字面です。新米などで酒を醸造する月であることから名付けられたとのこと。おおいに食欲と収穫の秋を満喫したいところですが、今年は相次ぐ台風による被害が深刻な状況です。だからこそでしょうか、食べられることの有り難さを感謝して、美味しく味わいたいと思います。

9月は寝覚月(ねざめづき)

 

2016_09.jpgなかなか落ち着かない天候が続いておりますが、夜空を見上げると、ふと秋の気配を感じるこの頃。夜もだんだんと長くなる気配。「長月」として広く知られる9月の異名は「夜長月」(よながつき)の略であるといわれております。他に気になる異名は「寝覚月」(ねざめづき)。やはり夜が長くなり、眠りから覚めることが多くなるため名付けられたとか。夜の長さを強調している今月は、お月見の時季でもあります。ちなみに今年の「中秋の名月」は9月15日(木)。旧暦の行事ではありますが、暑さも一段落し、空気も澄みはじめ、夜空を眺めるにはちょうど良い季節にふさわしいイベントといえます。個人的には眠気がちな毎日から目覚める月にしたいと思います。

8月は壮月(そうげつ)

2016_08.jpg いよいよオリンピック開催の8月となりました。ただでさえ暑い真夏のひと月、今年は高校野球とオリンピックで更に熱くなるのでしょうか。不安なニュースが絶えないこの頃、爽やかな熱気を味わえたらと思います。8月の異名として一般的なのは「葉月」。旧暦ではすでに秋に突入していたため、木の葉が黄色に色づいて落ちるところから「葉落ち月」(はおちづき)が訛ったとする説と、「穂発月、穂張り月」(ほはりづき)から「はづき」になったという稲作に関する説があります。その他、迎寒(げいかん)、仲秋(ちゅうしゅう)など夏真っ盛りに当てはめづらいものが並ぶのですが、「壮月」(そうげつ)という異名はしっくりきます。草花が盛んな月を表し、「壮」には活力に満ち溢れ、勇ましいという意味があります。とくに今年のオリンピックはブラジルで開催。スケールの大きさも「壮」のイメージにピタリとはまります。毎年暑さで溶けそうになる8月の心身、今年は「壮月」の心持ちで過ごしていきたいです。

7月は穂含月(ほふみづき)

 2016年の後半がスタートいたしました。

2016_07.jpg前半は国内外で災害やテロが相次いでしまうなど、厳しい状況は否めません。が、過去を振り返ってみると、7月は変革の月ともいえます。アメリカ独立宣言、フランス革命、反動政治に対抗した7月革命、明治維新の引き金となる黒船来航も7月。そして今年は参院選に都知事選なども行われ、もやもやとしたなかでも確実に前後左右に進んでいくと思われます。7月の異名としては「文月」(ふみづき・ふづき)が親しまれており、七夕の行事に詩や書を記したり、書物を夜風にさらす風習があるから、という説が一般的です。一方で、稲穂が膨らむ時期であるため、「穂含月(ほふみづき)」「穂見月(ほみづき)」が「ふみづき」に転じたという説もあるとか。どちらも風流な情景が浮かびます。夜空や水田に代表されるこの時季ならではの美しさを大切にしつつ、今年後半に起こりうるであろう変化にも柔軟に対応していきたいと思います。

6月は皆仕尽(みなしつき)

20160601あやめと田んぼ.jpg 6月といえば、今年もそこまできたか、という軽めの焦りを感じる月。異名としては「水無月」が代表的です。旧暦であれば、梅雨が明けているので、水が無い「水無し月」と考えられがちです。実は諸説ありまして、「水無月」の「無」という字を「の」と読んで、田んぼが水でいっぱいになった「水の月」を意味するという説。田植えも終わり、農作業を「すべてしつくした」というところから「皆仕尽(みなしつき)」または「皆尽月(みなづき)」の省略という説があります。この「皆仕尽」自体も異名として用いられており、なかなか羨ましい響きがあります。今年はまだ「みなしつくした」感は味わえておりません。6月には「焦月(しょうげつ)」という異名も存在。共感をおぼえるも、やはり目標は「皆仕尽」の心境に到達したいと思う6月です。

5月は皐月(さつき)

阿蘇の棚田.jpg 5月といえば皐月(さつき)。由来は「早苗を植える『早苗月』が縮まったとされ、神に捧げる稲(=さ)を植える月『さつき』となる」とあります。他にも稲苗月 (いななえづき)、早稲月 (さいねづき)などありますが、「稲」の文字が目立ちます。田植えの時期は地域によって差はあるものの5月〜6月が多く、日本の原風景のひとつ、田植えシーズンスタートといえます。

 が、4月に発生した熊本地震は東日本大震災から5年を経たばかりの日本列島に打撃を与えるだけでなく、「田植え」シーズンを迎えた農家にとって計り知れない厳しい現実を突きつけています。熊本県は、西日本一の稲作面積を誇り、とくに阿蘇市は九州有数の米どころです。その阿蘇市では田植え直前の水田に地割れが走り、南阿蘇村では土砂が水田を埋めており、稲作以外の作付けも難しい事態に陥っているとの報告もあります。一方、被害の少ない農家では車中泊しながら「田植え」を開始したというニュースも届き、勇気づけられます。田植えの時期を迎えながらもできない他の農家の無念を抱え、できる限りのことを続ける被災者。こちらも何かできることをと思い、九州応援企画で取り寄せてみた熊本産のお米を噛みしめつつ、「皐月」の意味を改めて噛みしめてみる今年の5月です。

4月は得鳥羽月(えとりはづき)

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 「卯月」として有名な4月の異名。「卯の花」が咲く月を略して「うづき」になったと言われています。十二支の4番目が卯なので「卯月」という説もあれば、稲の種を植える植月(うつき)から、ともいわれています。「卯」の漢字には「茂る」という意味もあり、木の芽が茂る頃にふさわしい異名といえます。他には花残し月(はなのこしづき)、田植苗月(たうえなえづき)、鳥待月(とりまちづき)、木葉採月(このはとりづき)など春らしい字面が連なっております。そんななか、気になるのが「得鳥羽月」(えとりはづき)です。羽が生え変わる様子やひな鳥の姿が浮かび、巣立ちのイメージにもつながります。春本番、そして新年度の4月。花が咲き、鳥がさえずる暖かい空気に背中を押され、少しずつでも一歩踏み出したくなる季節の到来です。

3月は帰春(きしゅん)

sakura_photo03.jpg 今年も3月がやってきました。2011年から、「3月」は特別の意味を持ち合わせてきているように思います。震災から5年。時間は流れますが、流してはいけない課題や考えなければならないことを抱えています。

年度末、卒業式、おひな祭りなど、人生や暮らしの節目となる「3月」。そもそも12ヶ月の中でも特別な空気を醸し出しているようです。よく使われる「弥生」という異名は、<いよいよ、ますます草木が生い茂る>という、春らしい意味を持っています。他にも、花見月 (はなみづき)、春惜月 (はるおしみづき)、夢見月 (ゆめみづき)、緑秀 (りょくしゅう)など、パステルカラーが目に浮かぶような異名が続きます。少し気になるのは「帰春」(きしゅん)。詩や唄のタイトルにも似合いそうです。ふと思い立ち、漢詩の世界をのぞいてみると、「春帰」という詩がありました。作者は国語の授業で耳慣れた「杜甫」。春らしい風景が浮かぶ詩の世界が広がります。この世にはいろいろ問題はあるけれど、人の一生だってそんなに長いもんじゃない、季節を味わおう、という意味のようです。「帰春」の月に、「春帰」の詩を思いながら過ごしてみたいと思います。

2月は令月

feb2.jpg 2月といえば、「きさらぎ」。おなじ「きさらぎ」でも、代表的な「如月」のほか、衣更着、来更来、葱更生、気更来、と表記は様々。すべて「きさらぎ」です。草木がよみがえることを表す言葉であり、2月の異名でもあります。

 他にも「梅見月」「梅月」など、2月らしい異名もあれば、「橘如(きつじょ)」、「降入(こうにゅう)」などわかりづらいものもあります。今年の1月はあまりすっきりしないニュースが飛び交い、例年通りではありますが、あっという間の1ヶ月となってしまいました。とりあえず仕切り直しということで、異名の一つの「令月」を紹介します。

 「令月」とは、「万事をなすのによい月」とのこと。2月は暦のうえでは春となる立春、そしてチョコレート好きにはうれしいバレンタインが控えています。まだ今年はスタートしたばかり。「きさらぎ」と「令月」の意味をかみしながら、他の月よりも短い2月の時間を丁寧に踏み進んでいけたらと思います。

1月は太郎月

2016_01用.jpg2016年に突入いたしました。昨年は人生のなかでも最速の一年でした。もはや年々加速する時間の流れはどうにもならないと割り切っておりますが、それでも、もう少しなんとかならないものかと時間自体を見直してみたくなります。とりあえず、「月単位」で捉えてみると、旧暦の名前が思い浮かびます。「異名」と呼ばれ、例えば1月、2月は「睦月」、「如月」が知られており、別段新鮮味もありません。が、12の月はそれぞれあまり知られていない異名を隠し持っている様子です。月を聞き慣れない異名で捉えてみると、普段とは別の時間が広がっているような、そんな気分になれそうです。というわけで、今年は「月の異名」をテーマにいたします。元月 (げんげつ)、夷鐘 (いしょう)、花晨 (かしん)、青春 (せいしゅん)など、数ある1月の異名のうち、「太郎月」が気になります。「太郎」とは長男に多い名前なので年の初めを表すのかと想像しますが、実は神の子を意味する名前なのだとか。1月がきりりとした清々しさを感じるのは年初のせいか、神の子のおかげか。次郎月や五郎月といった異名は今のところ確認できておりませんが、人智を超えたパワーを身近に思えるこの月を大事に過ごさねばと思います。

 本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

文様の話

2015年のテーマは文様についてお話します

組紐文様

ケルズの書.jpg 顔を近づけて眺めていると、文様の中に取り込まれそうになるのがケルトの組紐文様。ハロウィンでおなじみになったケルト人が用いた文様です。日本の伝統的な洗練された組紐文とはひと味違います。いっそのこと文様の世界の住人になれればよいと思うほど見飽きない魅力があります。組紐に取り込まれた人間や動物たち、東洋とのつながりをうかがわせる巴文の存在など、合理的・理性的なイメージのヨーロッパとは思えない、土着な空気を伝えてくれます。ケルトの組紐文様の結び目は、再生を表しており、人、動物、植物が絡み合うデザインはそれぞれの相互依存を意味しているとのこと。今の世の中、絡み過ぎてこじれたり、疎外感をおぼえることもあります。できればケルトの文様に登場する人や動物のように、絡み合いながらもそれぞれが面白さを失わずにいられたらと思います。

市松文様

市松.jpg今年もお歳暮やおせち、年賀状のパンフレットが登場する季節となりました。

年賀状のパンフレットをめくると、そこは文様の宝庫でもあります。おめでたい吉祥文様や和風のテイストを醸し出す連続文様など、あちらこちらに探し出すことができます。今年の文成社のパンフレットには背景に市松文様があしらわれています。世界中で用いられ、シロクロはっきりさせる意味合いもあるこの文様、そもそもなぜ日本では「市松文様」と呼ばれるのでしょうか。江戸時代の歌舞伎役者「佐野川市松」が由来とか。市松がまとっていた衣装の模様が大流行したことから「市松文様」として現代まで受け継がれています。美貌の役者とのことで、浮世絵にも描かれています。一見すると、当時の美貌と今の美貌に隔たりがあるのかもと納得できない部分もありますが、文様は変わらずに親しまれているのだなと、年賀状のパンフレットを眺めながら確信しております。

吹き寄せ文様

吹き寄せ.jpg 涼しい風の吹く季節になりました。秋の風には台風のような強烈なものから心地よいそよ風まで、幅広さを感じます。文様のなかにも、風を表す「吹き寄せ」があります。強風のあと、地面に吹き集められた様々な落ち葉を表しています。ふと、アスファルトの隅にたまる「掃きだめ」のような光景が浮かんでしまうのですが、江戸時代の人はさすがに風流。「吹き寄せ」を「富貴寄せ」と語呂合わせをし、おめでたい文様として用いています。秋を代表するイチョウやカエデのほかに松葉やツタが登場しますが、桜の花などを交えたタイプも存在し、季節を超えた文様として使われています。

秋風を感じるこの季節、落ち葉も「富貴寄せ」として味わえるようようになれたら、と思います。

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